今回は保険販売に直結するセミナー営業の作り方を解説します。たまにセミナー営業に取り組んでいる保険営業マンや士業の方から「セミナーや勉強会を開催しても成約につながらない…」というご相談をいただきます。毎回ある程度の参加者は集められる。でも、売上につながらない。こういう悩みです。なぜ売上につながらないのか。実は、その最大の原因はセミナーの‟シナリオ”にあります。詳しく解説しましょう…
保険販売に直結するセミナーの「型」とは?
セミナーのタイプには2種類あります。ひとつは【情報提供型セミナー】、もうひとつは【問題解決型セミナー】です。前者はセミナーの内容が主催者の「話したいこと」「話せる」ことにフォーカスします。一方、後者は参加者が「知りたいこと」「解決したいこと」にフォーカスします。
- 情報提供型セミナー
- 問題解決型セミナー
2つの決定的な違いはセミナーが終わった後の反応です。次をご覧ください。どちらが保険販売につながるセミナーかは明らかでしょう。そうです。セミナー営業で保険を売るには「私の場合はどうすればいいの?」という反応を引き出す【問題解決型セミナー】にする必要があるのです。
では、保険販売に直結する【問題解決型セミナー】とはどういうものか?
参加者を行動に駆り立てるシナリオの作り方を解説しましょう。「セミナーや勉強会を開催しても成約につながらない…」と悩んでいる方は今からご紹介する流れでセミナー構成を考えてください。そうすれば、おのずとセミナー終了後に「私の場合はどうすればいいの?」と参加者から言ってもらえます。
参加者を行動に駆り立てるシナリオの作り方
例えば、『会社と社長の手元キャッシュを最大化する方法』というセミナーを開催するとしましょう。参加対象は社長です。社長なら誰もが「稼いだお金を1円でも多く残したい!」と望んでいます。しかし、現実は「稼いでもお金が残らない…」と悩んでいます。ここに“理想と現実とのギャップ”があります。
理想と現実とのギャップを埋める
この“理想と現実とのギャップ”を埋める方法をセミナーではステップ・バイ・ステップで伝えていくのが【問題解決型セミナー】になります。次をご覧ください。
よって、セミナーでは「稼いだお金が1円でも多く残る方法」を具体的に教えるようにします。もちろん、その具体的方法には「保険」を使った問題解決の方法も含まれます。ただし、単にその具体的方法を教えてあげるだけではダメです。「なるほど、参考になった!」という参加者の感想をもらうだけで終わってしまいます。そこでどうするか。保険販売につなげるにはセミナーのシナリオを次の構成で作るのです。
問題解決型セミナーのシナリオ構成
まずは上記のようにセミナーを3つのパートに分けて考えます。全体の時間配分は30%:60%:10%を目安にしましょう。次に各パートのシナリオを考えます。それぞれのポイントを細かく見ていきます。
シナリオ構成#1は「問題提起」です。このパートはセミナーの導入部分です。全体30%の時間配分を目安にします。例えば、1時間半のセミナーなら30分前後。3時間のセミナーなら60分前後になります。このパートで伝えるべきは次の3つです。
- #1-1 自己紹介
- #1-2 イントロ(つかみ)
- #1-3 問題提起
#1-1 自己紹介
セミナーの時間は限られています。社長たちは忙しい合間を縫って参加しています。そんな社長を前に長々と自己紹介するのはNGです。他に伝えるべき内容は山ほどあります。よって、セミナー冒頭の自己紹介では「いかにあなたが社長の役に立てるか?」を語るのみにします。以下の記事(2.自己PR部分)を参考にこの点にフォーカスした簡潔な自己紹介を考えましょう。長くても2~3分でまとめるのがベターです。
とはいえ、詳しい自己紹介が不要なわけではありません。社長にあなたを知ってもらうことはとても重要です。どこの誰かもわからない相手から高額保険に加入してくれる社長などいないからです。
そこで、おすすめしたいのが、右のような「自己紹介シート」を事前に配布しておくことです。そうすれば、口頭での自己紹介は簡潔にすまして、「私の詳しいプロフィールについては別紙をご覧になってください」とやることができます。
この方法ならセミナーの時間を使わずに効果的にあなたを売り込めます。ぜひ参考にしてください。
#1-2 イントロ(つかみ)
冒頭部分は自己紹介に始まって、次はこのセミナーのメリットを伝えます。いわゆる“つかみ”です。ここはセミナー参加者の期待値を膨らませるパートです。例えば、「セミナーが終わったら、個人と法人の支出を1円も変えずに、数百万円単位で手元に残るキャッシュを増やせるようになります!」と伝えます。このようにメリット伝えることで、まずは社長たちの興味を「グッ」と惹き付けます。
#1-3 問題提起
セミナーに参加している社長たちは特定の悩みを抱えていて、その悩みを解決したいと考えています。ここで社長たちの問題意識をさらに深めていきます。社長たちにこの現状を何とかしたい。そう思ってもらうためです。無意識に人は“得する”ことよりも“損する”ことを避けようとします。これを「損失回避の法則」というのですが、その法則を発動させましょう。例えば、「なぜ稼いでもお金が残らないのか?」「このまま放っておくとどうなるのか?」を具体的数値やデータを交えて社長たちに警鐘を鳴らすのです。
シナリオ構成#2は「解決策提示」です。このパートはセミナーの核心部分です。よって全体60%の時間配分を目安にします。例えば、1時間半のセミナーなら60分前後。3時間のセミナーなら120分前後になります。このパートで伝えるべきは次の4つです。
- #2-1 解決策提示
- #2-2 メリットの説明
- #2-3 証拠・根拠の提示
- #2-4 デメリットの説明
#2-1 解決策提示
いよいよセミナーのテーマです。具体的な解決策を提示します。例えば、「でもご安心ください。今からあなたに個人と法人の支出1円も変えずに、手元に残るキャッシュを増やせる方法をお教えします。うまくすれば数百~数千万円単位で手元キャッシュを増やせるでしょう。いずれも今日から実践できる方法です…」として、その解決策を明かしていきます。
#2-2 メリットの説明
提示した解決策のメリットを説明します。ここで重要なのは「そのメリットで社長は何を手にできるのか?」を伝えること。そのメリットがあるゆえ、社長たちは“あるべき姿”を手に入れることができると続けます。例えば、「この解決策を実行すると、税金と社会保険料を年間××万円削減できます。その結果、年間××万円ものキャッシュが手元に残ることになります…」とビフォー・アフターで‟変化”を語ります。
#2-3 証拠・根拠の提示
このように解決策とそのメリットを提示すると、社長たちは「そんなことが本当にできるのか?」と心の中で思います。当然そうした疑問や疑念を払拭する必要があります。そこで、社長たちの疑問や疑念に対して「なるほど!」と納得させる証拠・根拠を提示します。例えば、シミュレーションを提示する。成功事例やお客様の声を紹介する。法的な裏付け(税務通達/法令解釈など)を明示する。…などがそうです。
#2-4 デメリットの説明
疑問に答えていない。デメリットに触れていない。そんな消化不良が社長たちの行動を阻害します。そうならないように先手を打ちます。例えば、解決策を実行するうえでのよくある質問を紹介する。デメリットを隠さずに伝える。…などして、社長たちの疑問点を先取りします。参加者を巻き込んだ質疑応答の時間を設けるのもアリです。いずれにして、ここで社長たちが行動しない理由を塗り潰しておきます。
シナリオ構成#3は「行動喚起」です。このパートでクロージングします。全体10%の時間配分を目安にします。例えば、1時間半のセミナーなら10分前後。3時間のセミナーなら20分前後になります。このパートで伝えるべきは次の2つです。
- #3-1 クロージング
- #3-2 おわりに
#3-1 クロージング
あなたが開催したセミナーはこのためにあります。大事なことは1つです。社長たちに「どうして欲しいのか?」を具体的にハッキリ伝えることです。例えば、個別相談や事前診断をしたいなら、その場でヒアリングシートを記入してもらうようにしましょう。セミナー終了後に記入してもらうと流れ解散になって回収率が下がります。そうならないよう次の「3-2.おわりに」の前に記入時間を取るのがポイントです。
#3-2 おわりに
おわりの挨拶です。終わりよければすべてよし。この部分はセミナーの評価を大きく左右します。挨拶がバチッと決まると社長たちから拍手がもらえます。あなたの仕事に対する想いやミッションを伝えましょう。難しく考える必要はありません。例えば、「なぜこのセミナーを開催しようと思ったのか?」「社長たちにどうなって欲しいのか?」「そのためにあなたがお手伝いできることは何か?」などを伝えるのです。
セミナー営業で絶対にやってはいけないこと
人は自分の知らないことを教えてくれる人を信頼します。それが、自分の悩みを解決する方法だったら、なおのことです。だから、セミナー営業ではあなたと社長たちは【教える・教えられる】という、「先生と生徒」の関係性になり、“信頼関係”を一気に構築できるわけです。
しかし、このとき絶対に忘れてはいけないことがあります。それは、売り込まないから「先生」になれるということです。従って、セミナーでは決して「保険」という商品を売り込んではいけません。社長たちは自分の悩みを解決する方法をあなたから聞くためにセミナーに参加しています。その大前提から外れて、セミナーで「保険」という商品を売り込みしたら、どうなるか考えてみましょう。
セミナー営業でのあなたの立ち位置
それをやった途端、せっかく築きかけた社長たちとの“信頼関係”は一瞬にして瓦解してしまいます。社長たちのあなたに対する認識が「先生」から「保険営業マン」に変わるからです。残念ながら、そうなるとセミナーでどれだけ素晴らしい話をしても、社長たちはあなたの話を「何も売り込まれるまい!」とバイアスをかけて聞くようになります。それではセミナー営業をやる意味がなくなってしまいます。
だからセミナーの最中は「講師」という役割に徹することがとても重要なのです。そのためセミナー営業では、あなたの立ち位置を変える必要があります。あくまでもセミナー営業でのあなたの立ち位置は【__という社長の悩みの解決方法を教える専門家】です。その立ち位置でセミナーの「講師」をしてください。
あなたが本来の「保険営業マン」に戻るのはセミナーの“後”です。セミナー終了後、社長たちと個別相談する段階ではじめて「保険営業マン」に役割をチェンジするのです。この点は肝に銘じておきましょう。
この記事のまとめ
セミナー初心者は知識情報を伝える【情報提供型セミナー】になってしまいがちです。しかし、それでは保険販売にはつながりません。仮に、同じテーマのセミナーだとしても、どういった順番で何を伝えるかで結果は大きく変わって来ます。ここでご紹介したセミナーシナリオは「私の場合はどうすればいいの?」という参加者の反応を引き出すための鉄板フォーマットです。
もしあなたがこれまでセミナー営業に取り組んでも「成約につながらなかった…」とお悩みなら、このシナリオを参考にセミナー全体の構成を考え直してみてください。これまでのセミナーとは参加者たちの反応がガラリと変わることに気が付くはずです。ぜひ参考にしてください。