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法人保険で社長の社会保険料を削減する②~社長が保険料削減すべき4つの理由

老齢厚生年金についいて多くの人が「せめて払った分くらいは戻ってくるはず」と勘違いしています。しかし、結論からいうと、戻ってきません。保険料を負担する人が年々減り続けて、年金をもらう人が年々増え続ける。考えるまでもなく、このような状況で戻ってくるわけがないのです。

以下のデータは学習院大学経済学部・鈴木亘教授がシミュレートした「社会保障全体の世代別損得勘定」です。ご覧のとおり、1960年生まれ以降は“払い損”になります。

出生年 厚生年金 出生年 厚生年金
1950年 770万円 1980年 ▲ 1,700万円
1960年 ▲ 260万円 1990年 ▲ 2,240万円
1970年 ▲ 1,050万円 2000年 ▲ 2,610万円

※ 学習院大学経済学部・鈴木亘教授によるシミュレーション。厚生年金に40年加入の男性、専業主婦の有配偶者がいるケース。生涯収入3億円として計算。60歳における平均余命まで生きた場合。保険料には事業主負担分も含む。保険料率再引き上げを行うと仮定。

上記のシミュレーションが当たるかどうかはともかくとして、です。少子高齢化で保険料負担者が減り続けている現状を鑑みれば、現行の社会保障制度に「明るい未来」を見い出せる人などいるでしょうか。それがオーナー社長なら、なおさらです。なぜなら、オーナー社長には「社会保障全体の世代別損得勘定」とは別の、どうにも納得できない多くの制度矛盾があるからです。

以下、オーナー社長が今すぐ社会保険料削減に取り組むべき4つの理由を説明しましょう。





現在(平成31年度)の社会保険料率は次のとおりです。報酬に対して約30%のキャッシュが社会保険料として徴収されていることが分かります。社会保険料は経費の一部です。当然、オーナー社長の社会保険料も経費です。従って、オーナー社長の社会保険料削減はそのまま経費削減につながります。経費削減ができれば企業のキャッシュフローも改善され、その分でより良き事業運営に資金を投下できるはずです。

平成31年3月納付分からの社会保険料
(※健康保険・介護保険・厚生年金は東京都|協会けんぽの保険料率)
社会保険 会社負担 本人負担 労使合計
健康保険 4.950% 4.950% 9.900%
介護保険 0.865% 0.865% 1.730%
厚生年金 9.150% 9.150% 18.300%
合計 14.885% 14.885% 29.770%

理由その2|健康保険制度の矛盾

というよりも、支払保険料が多いと給付内容が下がるという制度矛盾を孕んでいます。以下は報酬20万円の場合と報酬 120 万円の場合の保険料と給付内容の比較です。ご覧のとおり、報酬20万円と報酬120万円と比較した場合、1ヶ月に支払う保険料の差はなんと115,847円です。一方、健康保険の給付内容を比較してみると、報酬20万円の給付内容が劣るのは、そう、「出産手当金」と「傷病手当金」だけなのです。

健康保険の保険料と給付内容
(※東京都協会けんぽ・40歳以上・事業主負担含む)
給付内容 報酬20万円 報酬120万円
健康保険料(1ヶ月) 22,940円 138,787円
給付内容 自己負担3割 自己負担3割
入院時食事療養費 1 食260円 1 食260円
高額療養費 医療費が1月 100 万円掛かった場合の自己負担限度
57,600円 277,513円
出産育児一時金 42万円 42万円
出産手当金 約4,447円(日) 約26,887円(日)
傷病手当金 約4,447円(日) 約26,887円(日)
埋葬料 5万円 5万円

逆に、報酬20万円が有利なものもあります。「高額療養費」です。報酬20万円は 57,600円で済む一方で、報酬120万円は277,513円の支払いになります。高額な保険料を支払うほど自己負担割合が高いという矛盾です。この差は平成 27 年 1 月の制度改定でますます広がりました。(民間の保険ではありえないことです)

たしかに、「出産手当金」と「傷病手当金」は報酬120万円の方が手厚くなっています。しかし、これはオーナー社長にとってはあまり意味のない制度です。まず大前提として、「出産手当金」は女性限定の給付です。社長が女性で出産の予定があるなら給付されますが、そうでない男性には関係のない話です。

次に、「傷病手当金」です。その給付条件は休職期間中に報酬が支払われない場合に給付される制度です。逆に、休職期間中に報酬を受け取っていれば給付されないわけです。ここで考えてほしいのは、病気やケガなどで社長が休職したとして「報酬を受け取らないということがあるか?」ということです。

従って、「出産手当金」と「傷病手当金」の給付内容の差は大したメリットではないわけです。このように報酬の違いによる健康保険料と給付内容を比較してみると、オーナー社長が高額な保険料を支払うメリットを見つけるのが難しいとわかるでしょう。

理由その3|将来受け取る年金のコスパが悪すぎる

実は、ここにも社会保険の矛盾があります。ご存知のとおり、厚生年金の保険料は労使折半で負担する仕組みです。となれば、オーナー社長ならどちらの保険料も自分で負担しているのと同義といえます。そう考えると、どうにもこうにも、支払った保険料に対するコストパフォーマンスが悪すぎるのです。

現在の厚生年金の保険料率は18.300%です。仮に40年間ずっと厚生年金に加入していて標準報酬月額が50万円だったとしましょう。すると、以下の保険料を支払っている計算です。

600万円 × 18.300% × 40年 = 43,920,000円

一方、受取年金額はというと、平成 30 年度の老齢基礎年金で年額 779,300 円です。これに加えて老齢厚生年金(従前額保障で計算)ではおおよそ、、、

600万円 × 5.769/1,000 × 40年 × 1.031 × 0.985 = 年額1,406,069円

つまり、老齢基礎年金と老齢厚生年金でおおよそ年額 2,185,369円(年額 779,300円+年額1,406,069円)になります。そうなると、「いったい何年で元が取れるのか?」という問題になるわけですが、その答えはズバリ、「約20年」です。

43,920,000円 ÷ 2,185,369円 = 20.097年

65歳から年金を受け取って20年経ったら年齢は「85歳」です。民間の金融商品で85歳以降は「トクですよ!」と勧誘されたとして、「あなたならその商品に契約しますか?」という話です。このようにオーナー社長の場合は年金のコストパフォーマンスが悪すぎるのです。老後資金の積み立てなら、他に有利な資産形成の方法がいくらでもあります。もし可能であれば、そちらに保険料を回した方が賢明ですよね。

理由その4|年金が受け取れない可能性がある

たしかに、コストパフォーマンスは悪くても、厚生年金の保険料は多く納めればその分将来の年金受取額に反映されます。それならば、ということで多少の諦めもつきます。しかし、現行制度には「在職老齢年金」というものがあります。これは何かというと、厚生年金を受け取る権利のある人が同時に厚生年金に加入していて、その人の報酬が高い場合は“年金を受け取れない”という制度です。

「在職老齢年金」は昭和12年4月2日以降生まれなら70歳だろうと、80歳だろうと、ずっと適用されてしまう制度です。ということは、年金受給年齢に達した時点でスッパリと会社経営から引退しないと、「本来受け取れる年金が受け取れない」ということです。

「だったら何のために高額な保険料を支払っていたのか?」と誰だって考えてしまいます。これまで高額な保険料を支払ってきたのに、いざ年金をもらう時期になったら一銭ももらえない。そんなバカな話が現実に起こっているのです。コストパフォーマンスは悪い。年金受給年齢になっても、現役でいる限りは年金が受け取れない。ならば、「高額な保険料を払うのはアホらしい」というのが本音ではないでしょうか。

 在職老齢年金制度の見直し方針発表!廃止を視野に高額所得者の年金減額縮小へ

この記事のまとめ

さて、オーナー社長が社会保険料を削減すべき4つの理由をお話してきました。とかく節税対策となると、積極的に取り組む中小企業も多いのですが、こと社会保険料に関しては、誰からも具体的なアドバイスをされたことがないなどの理由で、これまで手つかずのままだったケースがほとんどです。

しかし、社会保険料の上昇は「見えない増税」です。おまけに、オーナー社長は従業員とは違って実質的に負担している社会保険料は倍額なわけです。そう考えると、いかに社会保険がオーナー社長にとって不利な制度かがお分かりいただけたと思います。要するに、、、

これでもまだ今のままの社会保険料を支払い続けますか?

という話なのです。社長の答えが「甘んじて払い続ける」なら、それ以上はもう何も申し上げることはないのですが、「いや、合法的に社会保険料を大幅節減して、手元に残るキャッシュを少しでも増やしたい!」という社長の方が圧倒的に多いはずです。そこで、保険営業マンである、あなたの出番です。

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