先日、法人保険提案先の社長から4月の報酬改定にあたり、従業員の社会保険料削減対策を相談されました。何か効果的な対策はないでしょうか?
上記のご質問がありましたので、回答をシェアいたします。
ご存知のとおり、社会保険料は4月~6月までの報酬額をもとに算出し、ここで決まった保険料が9月から翌年8月まで適用されます。(※この手続きを「定時決定」といいます)ちょうど今は4月です。この時期に報酬額を改定する企業も多いことでしょう。その意味では今が旬なテーマです。
そこで今回は従業員の社会保険料削減対策をご紹介します。この対策で弊社では【対策前】と【対策後】とで年間215,380円の経費削減を実現しています。しかも、従業員の手取りを増やしながら、です。従業員2名分でこの金額です。会社によって数百万円単位の削減額になるかもしれません。
この記事の目次
従業員の手取りを増やして、社会保険料だけ削減する!
結論から言います。今からご紹介する対策によってもたらされた経済メリットは次のとおりです。ご覧のとおり、会社にとっても、従業員2人にとっても、メリットが生まれています。
会社 |
年間削減額(人件費+社保) |
215,380円() |
従業員A |
年間手取り増加額 |
88,704円() |
従業員B |
年間手取り増加額 |
82,476円() |
では、なぜこんなことが可能なのか?
従業員の手取りを増やして、社会保険料だけ削減するポイントは大きく3つです。
- 対策#1. 給与を下げて住まいを「借り上げ社宅」に切り替える
- 対策#2. 給与を下げて個人保険を「法人契約」に切り替える
- 対策#3. 4~6月までの給与を下げる
ビフォー&アフター比較表
これから3つのポイントを解説いたしますが、文章だけでは少々伝わりづらいかもしれません。そこで、「ビフォー&アフター比較表」を作成しました。下の画像をクリックすると、別ウインドウでPDFが開きます。そちらを見ながら解説をお読みになってください。
数年前まで弊社では従業員2名に次の給与を支払っており、そのまま何の対策も打たずにいれば、今頃は年間1,324,968円の社会保険料を負担していたところでした。しかしながら、今は年間934,608円の負担で済んでいます。しかも、社会保険料を削減したのに、従業員2名の手取りはそれぞれ増えているのです。
1. 給与を下げて住まいを「借り上げ社宅」に切り替える
弊社の従業員は2人とも賃貸マンションに住んでいました。そこで、まずそれぞれの賃貸契約を【個人契約】から【会社契約】に切り替え、「借り上げ社宅」として会社で家賃を支払うようにしました。ただし、家賃全額を会社が負担すると「現物給与」と見なされて社会保険料の算定基礎になってしまいます。そこで、家賃に対して社会保険料がかからないよう自己負担額を徴収します。
「全国現物給与価額一覧表(厚生労働大臣が定める現物給与の価額)」で社宅家賃の社会保険料がかからない自己負担額は確認できます。例えば、神奈川県の場合です。神奈川県は住宅の利益の額(畳1帖につき)が2,070円です。仮に借り上げ社宅の家賃が月10万円だとして、居室部分が畳20帖あるとすると、次の金額を自己負担させれば社宅家賃に社会保険料はかからない計算になります。
畳20帖 × 住宅の利益の額2,070円 = 自己負担額41,400円
つまり、家賃と自己負担額との「差額」(58,600円)には社会保険料はかからないわけです。そうして家賃10万円と自己負担額41,400円との「差額」(58,600円)だけ額面給与を引き下げれば、社会保険料の「等級」も下がります。その結果、従業員は社会保険料を削減できた分だけ、手取りが増えるという寸法です。
なお、本サイトで無料配布している「役員社宅家賃適正額簡易計算ソフト」を使えば社宅家賃の社会保険料がかからない自己負担額は簡単に計算できます。
2. 給与を下げて個人保険を「法人契約」に切り替える
これは『社会保険料劇的削減プラン』の従業員対策で解説している方法です。ロジックは「対策#1.」と同じ。単純に、従業員が「個人」で加入している保険を「法人」を契約者に名義変更してしまうのです。その際、保険料相当額は給与を引き下げることで調整します。これで社会保険料が下がります。
法人保険を活用した従業員の社会保険料削減対策は『社会保険料劇的削減プラン』で詳しく解説しております。既購入者の方はテキストを今一度ご確認ください。未購入者の方はこの機会にご検討ください。
3. 4~6月までの給与を下げる
最後の仕上げです。先述のとおり、社会保険料は毎年4月~6月の報酬額をもとに算出されます。よって、協会けんぽの「保険料額表」で等級の下がる報酬額を確認したうえで4月~6月の給与を下げて、その分は7月~3月の給与で調整します。こうすれば社会保険料を削減できます。
ただし、その調整金額は「2等級以内」に留めるようにします。「2等級以上」の報酬変動は「随時改定」によって保険料を見直さなければいけないからです。
この記事のまとめ
ここでご紹介した削減方法は従業員1 人当りで考えると大した金額ではありません。しかし、「チリも積もれば何とやら」です。従業員数の多い会社なら数百万円単位で社会保険料を削減できるかもしれません。何より、です。この削減方法は従業員の手取り増加を実現できるものです。
「従業員の社会保険料を削減する良い方法ないか?」
そうお悩みの社長がいたら、ここで紹介した削減方法を教えてあげてください。